ロサンゼルススペシャルフライトルールエリアでLAXを飛び越える
今日は飛行機の操縦の話題、LAX(ロサンゼルス国際空港)の上空をタワーからのクリアランスなしに VFR(有視界飛行)で抜ける手順についてです。
この特別ルールについては前回の記事、ロサンゼルススペシャルフライトルールエリア をご覧ください。今回は実際の飛行についてです。
ロサンゼルススペシャルフライトルールエリアでLAXの上を通過するのに重要なのは、とにかく決められたルートを飛ぶことです。ただし空に線が描いてあるわけではないので、どうやって進路を割り出すかという話になるのですが、これはVORというものを使います。具体的には、ロサンゼルススペシャルフライトルールエリアでは SMO(サンタモニカ空港)のVORで 132°のラジアルが指定されています。
VORというのは方角を示す電波を発射している地上施設で、空港をはじめあちこちに設置されています。パイロットは目標にしたいVORの周波数を無線機にセットすれば、そのVORからどっちの方角にいるのかが判ります。また、VORから見て一つの方角をセットしておけば、その直線上から現在どの程度ずれているかも知ることができます。針が計器のど真ん中に来れば、VORから見てセットした方角の直線上にいるこを示し、針が右に振れていればコースより左にずれており、左に振れていれば右にずれているって感じです。詳しくはwikipediaのVORなどをご覧ください。
さて、まずはロングビーチからサンタモニカの方へ抜ける、北西に向かう進路から。
ロサンゼルススペシャルフライトルールエリアを飛ぶときは、トランスポンダーのスクォークを 1201にセットします。
トランスポンダーとは右の写真の下にある機械で、これは管制塔に航空機の位置と高度を知らせるもの。普段VFRで飛ぶ時は1200 にセットしますが、エマージェンシーの時は 7700、ハイジャックされたときは 7500など、色々と決まりがあります。
続いて、飛ぶべきコースを見つけるためにVORをセットします。上の写真の右側の無線機、ナビゲーションの周波数に SMOのVORの 110.8をセットします。
なお今回はSMOに向かって飛んで行くので、分かりやすく 180°を足して 312°とセットしました。下の写真の右側の計器のように、TOインジケーターでCDIの針が中央になれば、SMOのVORから見て132°のコース上におり、サンタモニカ空港に向かって飛んでいることを示してます。
なお、北西に抜ける場合の指定高度は 4,500ft ちょうど。右の写真の左の計器が高度計で、4,500ft を指している状態です。
これ、言うのは簡単なんですが、結構難しいんですよ。幸いこの日はほぼ無風で、写真はうまくコースに乗れている状態です。このまま真っ直ぐ飛んで行けばOKです。
さて、LAXは目の前!ドキドキ。
LAXの真上に来ました♪
タワーとの交信は不要ですが、ここを通る小型機は多いので、安全のためにもまったく無言という訳にはいきません。右の写真の左の機械が交信用の無線機で、ロサンゼルススペシャルフライトルールエリアの周波数 128.55をセットします。
セルフアナウンスメントは、Los Angeles Special Flight Rules Area, Cessna 123AB over LAX, 4 thousand 5 hundred, bound North West ... とか、随時適当に。
さすがロサンゼルス国際空港、4本のオープンパラレルの滑走路に次々と航空機が発着する姿は圧巻です!上から見ると A380の巨大さもよく分かりますね~
24Lから青いサウスウェスト機が飛び立とうとしていますね…
ちょうどこの場所にて、機内から滑走路を眺めるとこんな感じです。
一方、サンタモニカからロングビーチに向かって、南東方向に抜ける場合は…
ルートは同じく SMOのVORで 132°のラジアルですが、高度は 3,500ftになります。今度はサンタモニカから離れていく方向なので、そのまま132°をセットして、FROMで針が真ん中に来ればOKです。右の写真の右の計器が、ちょうど132°の線上におり、左の高度計はきっかり 3,500ftを示している状態です。
ルールに従えばクリアランスなしにLAXの上を通過できるのは非常に楽ですし、飛行テクニックとしてもかなり面白いコースだと思います。ただしあれこれ注意しなければならないことが多いので、間違っても練習で飛んでみようなんて思わない方が良さそうです。今更ながら、こんなワガママを認めてくれた学校には感謝!ですが、スチューデントパイロットのソロクロスカントリーのフライトとしては前代未聞の有り得ないコースだそうです。(笑
本稿は個人的な経験のメモです。ロサンゼルススペシャルフライトルールエリアを飛ばれる方は必ずチャートで最新の情報をご確認ください。
LAX周辺はもっとも厳しい Class B(クラス・ブラボー)の空域です。うっかり方角や高度をあやまり、許可なく空域に侵入すれば、冗談抜きに大事になります。絶対にこのblogの内容だけで実際に飛行されませんよう、ご注意ください。