クロスカントリーフライト (砂漠編)
Kitagawa@Los Angeles です。
今日は訓練で飛んだクロスカントリーの様子を、写真を交えてご紹介したいと思います。
ロサンゼルス近郊には30か所以上の空港がありますが、ひとりで行って帰って来なければなりませんので、できる限り簡単なコースを組んでみました。ノンタワーの空港ばかり3か所を巡る4時間ほどのフライトです。
ブリーフィング
まず出発前に色々と情報を集めなければなりません。
行く先の空港については、A/FD という本を見て調べます。具体的なルートについては地図(Chartと言います)を見ながら飛行計画を立てます。空港の周辺には進入するのに管制からの許可が必要な空域(Air Spaceと言います)が設定されているので、うっかり無許可で入らないように注意が必要です。
出発の直前には、気象情報を入手します。これも色々と種類があるのですが、プライベートパイロットが毎回必ず見るのは空港周辺の現況を教えてくれるMETARと、これからの予報であるTAFの情報でしょうか。実際にこちらで調べた当日の状況はこんな感じです。
ほとんど暗号ですよね。毎日見ていればそのうち読めるようになっちゃいます。
アンダーラインの箇所を見ていただくと、風はほとんど無く、そして天候は快晴のようです。今日飛ばずにいつ飛ぶんだ!ってくらいに絶好のお天気に恵まれました。
という訳で、出発前のウェザーブリーフィングは「It's OK, no problem !」の一言で終了です。(爆
出発!
ヘッドセットやチェックリスト、チャート(地図)やNAVLOG(飛行計画書)を持って出発です。
今日はLeft Downwind Departure、滑走路を飛び立ったら左向きに180度旋回して、東に向かいます。
いざテイクオフ!左下に見えているのは、いつもお買いものするショッピングセンターです。
普段マニューバの練習をしている湖の上に到着しました。
このまま真っ直ぐ飛んで行きたいところですが、そうするとお隣の空軍基地の管制空域に突っ込んでしまいますので、湖の上でゆるゆると旋回して高度を稼ぎます。
チャートによればマーチ空港の周辺が5,500フィートまでClass Cとなっているようなので、それを飛び越えるべく5,700フィートまで高度を上げます。下から見たら、なんであの飛行機は同じところをぐるぐる回っているんだろう?って感じでしょうけど、こちらにも事情があるわけで。(笑
もちろん管制からトランジションのクリアランスをもらって空域を突き抜けて飛んで行く方法もあるのですが…広域を管轄するSOCALという管制塔がなかなか厄介でして、SOCALにつないで飛ぶと周波数を変えながら複数の管制官と代わる代わる会話をしなければならないので無線に神経を使うのです。前回はとてもハードなフライトになってしまったので、今年からは「面倒な空域は回避しながら飛ぶ、SOCALとはしゃべらない!」という作戦に変更しております。
そんな感じで高度を稼ぎまして、マーチ空軍基地の上を通過します。
目標の高度になったら、トリムを使ってレベル(水平飛行)に調整します。トリムをちゃんと使えるようになってから、ほんとフライトが楽になりました。
今日はほとんど風が無いので、あとは放っておいても飛行機は真っ直ぐ飛んで行ってくれます。(きゃは♪
ちなみに VFR(有視界飛行)の場合、東に飛んでいく時は 奇数の1000倍+500フィート、西に飛んでいく時は 偶数の1000倍+500フィートと高度が決まっているので、前から誰かが突っ込んでくる心配もありませんし、ぽんこつセスナなので間違っても他の機に突っ込むこともございません。(爆
もちろん赤信号も渋滞もないので快適そのもの、飛行機の楽しいところです。
高度は 5,700フィート、90ノットで安定飛行中です。時速だと160キロくらいかな。
この先はバニングパスと呼ばれる難所で、10,000フィート以上の山に挟まれた谷は風が強く煽られることも多いのですが、今日はあっけないくらいスムーズに抜けてしまいました。
程なく避寒地として有名なパームスプリングスの町並みが見えてきました。ロサンゼルスからは約180km、有名なゴルフコースが何か所もあり、砂漠リゾートとして有名だそうです。
パームスプリングス空港はなんと国際空港で、チャートによれば3,000フィートまでがClass Dとなっているようです。
中継地
僕が降りるのはパームスプリングスのもう少し先にある、サーマル空港です。
こっちはClass Eのノンタワー空港なので、許可も不要で誰でも勝手に降りられますし、空港のど真ん中にVORという電波を発射する設備もあるので、計器を使って絶対に迷子にならずに真上まで辿り着ける素敵な空港でもあります。
空港の向こうに見えているのはソルトン湖。これはカリフォルニア州最大の湖で、なんと塩水湖だそうです。
さて、目の前の滑走路はランウェイ12で、このままストレートインでランディングするのがスマートですが…ちょっと細くて怖いので、ぐるりと回って大きな滑走路であるランウェイ17の方に降りることにしました。
やっぱり飛行機は着陸が一番難しく、なかなか思うように綺麗に降りられませんが、まぁなんとか無事ランディングです。
ぃやー疲れた!とここで休憩したいところですが、まだまだ先は長いのです。
この空港に特別な用事もないので…すぐにタクシーウェイを通ってランウェイ17に戻りテイクオフ。さらに東へと飛び続けます。
ここから先は一面の砂漠、だんだん暑くなってきました。
到着!
見所らしい見所もなくひたすら東に飛び続けて、ようやく目的地であるブライス空港が見えてきました。
ロサンゼルスのセクショナルチャートでもギリギリ端っこに載っているような空港で、ネットでもほとんど情報が出てきません。(爆
滑走路は2本が直交しており、太くて短い 8-26 と、長くて細い 17-35。目の前に見えているのが ランウェイ8 です。そうそう、空港で滑走路の端に数字が書かれているのを見たことがありませんか?あれは滑走路の向かっている方角から下一桁を省いて番号にしています。
飛行機は原則として風上に向かって着陸しますので、パイロットは無線で空港の気象情報を聞いて、どの滑走路に降りるのが良いのか判断します。今回は南から風が吹いているので、向かって横向きの滑走路に左から降りることにしました。番号で言えばランウェイ17、すなわちこの滑走路は方位170度方向でほぼ南向きです。空港周辺はトラフィックパターンという場周経路があり、ほとんどの場合は左回りです。今回は空港の上を対地1500フィートで飛び越えてから、降りる滑走路に並行するトラフィックパターンに対地1000フィートで入り、黒い線のようにぐるりと回り込んで着陸します。
混んでる空港だと前の飛行機との間隔を空けたり、今から飛ぼうとしている飛行機に注意が必要ですが…ここは超ヒマな空港らしく、とうとう無線では誰の声を聞くこともありませんでした。
これなら余裕で着陸できそうなものですが…う~ん、毎度のことながらちょっとアプローチが低すぎの感あり。なかなか上手くいかないものです。
ここまで2時間半ほど、風もほとんどなく快適で楽しいフライトでしたが、やっぱりソロのクロスカントリーは緊張します。空港は…見事に誰もいないですね。(笑
午後になると40度を超えかねないので、ここで給油して、さっさと戻ることにします!
感想
今回はほとんどトラフィックのない砂漠の方向へ、ノンタワー空港ばかりのクロスカントリーでした。
あくまで教習中の身なので、出来る限り簡単なコースで何事も無く終わらせるのが一番なんですが…
やっぱり山や砂漠ばかりだと景色が単調で飽きちゃいます。できれば 町や海の上を飛びたい!というのが正直なところ。
で、毎度のことですが思いっきりワガママを言いまして、実はこの後さらに別のコースでもう一度ソロのクロスカントリーに出るのです。(爆
学校の皆には「2回も行くなんて聞いたことが無い」と呆れられ、教官には「練習でロサンゼルス国際空港の上をぶっちぎるなんて滅茶苦茶だ、考え直せ」とまで言われましたが…
これがとても良い経験になりましたので、後日記事にしたいと思います。