06.11
パナマ運河 (ミラフローレス閘門の見学)
パナマと言えばパナマ運河!
この運河の建造は20世紀を代表する土木工事であり、くしくも今年はパナマ運河の開業100周年です。せっかく中米まで来ましたので、この有名な運河を見学してみました。
パナマ運河 Panama Canal
パナマ運河を一言で言うと、太平洋とカリブ海の間の陸地80kmを切り開き、船が通れるようにしたもの。かつて海上で太平洋と大西洋を行き来しようとなると南米大陸をぐるりと回って22日ほど要していましたが、パナマ運河の完成により10時間ほどで通過できるようになったそうです。
こちらはパナマ運河のリーフレットに掲載されていた断面図です。
真ん中の大きな湖がガトゥン湖で、これを大西洋と太平洋それぞれにつなげたものがパナマ運河です。ただし一続きではなく、図を見ると何やら階段状になっていますね。ガトゥン湖は海抜26mの高さがあるため、ここを通り抜けるためには船を26m持ち上げなくてはなりません。そのために設けられたのが閘門(こうもん)で、水を入れたり出したりしてエレベーターよろしく船を上下させるのです。
ガイドさん曰く、観光客によく見られる勘違いは「大西洋と太平洋の水位を合わせるために閘門を作った」というもの。これは大きな間違いで、世界中の海の水位に違いはありません。そのため当初はブチ抜きで運河を作ることも検討されたそうですが、技術的にも金銭的にもあまりに大変なため、閘門を経てガトゥン湖を通る航路が採用されたそうです。この辺りの運河建設にまつわる紆余曲折の歴史も興味深いのですが…切りがないのでここでは省略。各閘門で船を上下させるための水はガトゥン湖からの水圧を利用しているそうですよ。
今回見学するのは上の図で赤い線を引いたところ、太平洋にもっとも近い「ミラフローレス閘門」です。
ミラフローレス閘門
乗り物や輸送システムに関心の高いKitagawa、パナマ運河はいつか訪れたい施設でしたが、ようやく願いが叶いました。
ミラフローレスの閘門はパナマシティの西8kmにあり、新市街からは車で15分ほどで来ることができます。
まずはパナマ運河を一望できる「アンコンの丘」から見下ろしたパノラマ写真です。
右手の奥にミラフローレス閘門があり、運河は左手の太平洋につながっています。最初にここに連れてきていただいたので、パナマ運河の地理が良く分かりました。実際、パナマ運河の建造中はこの丘の上から監視を行なっていたそうです。
ミラフローレス閘門の前には立派なビジターセンターが建てられています。
運河を眺める展望スタンドのほか、パナマ運河に関する映画の上映や展示室などが整備されており、英語での解説もありました。
そしてこちらがパナマ運河のミラフローレス閘門!
ここをお船が行ったり来たりするんですね。
パナマ運河の見学ツアー
さて、パナマで最大にして唯一のお楽しみである運河の見学ですが…
お天気は雨、しかも鬼のような豪雨です。
今回のパナマでの滞在は日程がタイトなため、すべての見どころをプライベートガイドとともに専用車で回っています。ガイドさんが言うには、あえて雨が降るタイミングに合わせてパナマ運河の見学を組んだとのこと。と言うのも、他の見どころはすべて屋外ですがパナマ運河はビジターセンターの建物から見学するため雨でも濡れることが無いのです。結果として他の見どころは雨に降られることなくすべて見て回れたので、素晴らしい調整をしてくれたガイドのホセファとドライバーのアントニオには感謝しています。
さて、映画の上映を見たりしてパナマ運河について学んだ後、そろそろ船が近づいてくると言うので展望スタンドに上がります。激しい雨の中、のろのろと巨大な船がやって来ました。
船の後ろの閘門扉を閉じたら、閘室の水を抜いて水位を下げていきます。Kitagawaが初めて閘門を体験したのは中国の長江で、三峡クルーズの船上でした。最近ではオーストリアのウィーンからハンガリーのブダペストまでドナウ川をクルーズした時も閘門を通過しています。こうして外側から水位が変化するのを見るのも面白いですね。
どんどん水が抜かれて、大きな船体が閘室の中に沈んでいきます。
安全のためでしょうか、閘門扉は二重になっているようです。閘室の水位が揃ったら、船の前方の扉が開かれて…
通過!ミラフローレス閘門の見学のクライマックスです。
さらっと書いていますが、ここまで相当な時間がかかります。ビデオも撮ったのですが、見るのうんざりするくらい長い…
船は閘門の幅ギリギリですね、ぶつかったりしないのでしょうか。
ところで、じっくり見ると船の前後左右に電車みたいなものがいるのに気付きませんか?
パナマ運河の閘門は狭いので、大きな船は自力で航行して通り抜けることができません。というより、実際はパナマ運河を通過できる大きさを最大として貨物船が設計されるそうで、これを パナマックス Panamaxと言います。
ではパナマックスサイズの船をどうやって通過させるかというと、なんと前後左右から電気機関車で引っ張って行くんです。船を機関車で引っ張る?これはまったく知りませんでした!
この電車、チョロチョロと前後に動いていて可愛らしいのですが、巨大なタンカーを引っ張るなんて大したパワーです。
聞いたところ、この電気機関車は我らが日本製とのこと!パナマ運河でも頑張っていましたよ、メイドインジャパン。
展示室には模型もあって、右下のプレートには東洋電機製造、川崎重工業、三菱重工業のロゴが光っていました。(東洋電機製造は電車を作っている会社で、東証一部にも上場しています。)
地球の裏側で日本の技術が世界の貿易に役だっているなんて、ちょっと誇らしい気分になっちゃいました。
船が通過したら後ろの閘門扉が閉じられて…
もう1回同じように閘室の水位を下げたら海面です。
あの門を抜ければ、もう太平洋ですよ。
こんな感じで、船舶がミラフローレス閘門を通過する一連のショーが終わります。
この船について船体に書かれたIMOナンバー9421336を調べてみたところ、マーシャル諸島船籍の化学品タンカー「Marlin Topaz号」であることが分かりました。なるほど、コンテナを積んでいないわけですね。2009年の造船で総トン数は 30,345GTとのこと。余談ですが、7ケタのIMO船舶番号は所有者が変わっても数字が変わることはありません。クルマで言うところの車体番号のようなもので、100トン以上の客船と300トン以上の貨物船に記載されています。あまり役に立たない知識かもしれませんが、気になった船について調べるなら船名を控えるより船舶番号を探した方が確実です。
ところで、パナマ運河の通航料は船と積み荷の重さを基準にして決められています。
パナマ運河がアメリカからパナマ政府に返還されてからは通航料の値上げが続いているようで、コンテナ船においてはこの数年で倍近くまで上昇しているという報道も見かけました。最近では日本の商船隊がパナマ運河の利用を避ける動きも出てきているようです。
そうそう、この通航料についてはもう一つ面白いエピソードを聞きました。かつてパナマ運河を泳いで渡った冒険家がいるそうで、その時の通航料は彼自身の体重に応じて 36セントだったそうです。名前はリチャード・ハリバートン、彼の写真も展示されていました。
最後におまけ。パナマ運河を通過する船からミラフローレス水門を見るとこんな感じです。
無理を言ってタンカーに乗せていただきました!
って言うのは嘘で、シミュレーターの映像です。お後がよろしいようで。(笑
パナマはロサンゼルスから直行便が飛んでいるので、また来ることもあるでしょう。でもどうせなら、いつか豪華客船に乗ってパナマ運河を通過してみようと誓って、ミラフローレス水門を後にするのでした。
Canal de Panamá
ミラフローレス・ビジターセンター
パナマ共和国の首都パナマシティの新市街から約8km、車で15分。
アクセスは現地発ツアーまたはタクシーで。
【TEL】 +507 276 8325
【FAX】 +507 276 8469
2014年5月現在の料金表
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