01.15
ライン川クルーズで見たドイツのお城
ドイツのライン川の中流域には多くの古城や城砦が残っており、一帯は世界遺産に指定されています。お城がいっぱいあるけど、どうやって見て回れば良いか分からない…そんな時は、ライン川を行く遊覧船に乗って、のんびり眺めるのが気軽でおすすめです。
ライン川はスイスのアルプスを水源とし、ドイツを含めて9か国を流れる国際河川です。全長は1,320kmという記述が多いものの、最新のデータでは1,233kmとなっています。ドイツ国内を流れる698kmのうち、ビンゲンBingen ~ コブレンツKoblenz の間、65kmが「ライン渓谷中流上部」として世界遺産に登録されています。
ライン川の遊覧船による城巡りについて
ライン川クルーズでの定番は KDライン観光船 KD RHINE です。
フランクフルトから日帰りで楽しむこともでき、ドイツ旅行ではおすすめ度の高いコースの一つです。
船内の様子。好きな場所に座り、のんびり過ごせます。
もちろんデッキに出ることも可能。船足は遅く、ほとんど揺れることもありません。
船内ではいつでも食事や飲み物を注文できます。
春の味覚といえば、シュパーゲルSpargelですね!ドイツでいただく白アスパラガスは本当に美味。
さて、マインツ(またはリューデスハイムやビンゲン)で乗船し、コブレンツまでの川下りコースをご紹介します。
5時間30分に渡る船の旅、Kitagawaが見つけた16城を一気にご覧ください。
エーレンフェルス城跡 Ruine Ehrenfels
ビンゲンを過ぎて右手に最初に見つけたお城がこちら。1211年にマインツ大司教により税関所として築かれた城砦です。
1689年にフランス軍に破壊されたまま廃墟になっています。修復せずに300年以上も放置されているなんて驚きます。
ラインシュタイン城 Burg Rheinstein
この先しばらく左手にお城が続きます。つまり…午前中の方が綺麗に写真が撮れるのです。
ラインシュタイン城はライン川でも美しいお城に数えられ、かっちりした作りが好印象です。
築城者や築年代はよく分かっておらず、領主や名称も何度か変わっているようです。内部は見学が可能。
ライヒェンシュタイン城 Brug Reichenstein
続いて左側に見える大きなお城。外観にやや赤みがあり、歴史を感じさせてくれます。
基礎は11世紀初めに造られ、ライン川の沿岸で最も古いお城だそうです。
13世紀初めには盗賊騎士団の根城となっていたところ、1282年にルドルフ1世の攻撃により廃墟に。近年ホテルとなった後、現在は博物館になっているそうです。
ゾーネック城(ゾーンエック城) Burg Sooneck
同じく左側、元はライヒェンシュタイン城の守りとして11世紀に建てられたお城です。
中は見ていませんが、住んだら楽しそうな作りです。いったい何階建てなんでしょう?
ここも盗賊騎士団の根城になってしまったものを、ライン都市同盟やルドルフ1世に攻撃され、1689年にはフランス軍に破壊されて…とライヒェンシュタイン城と同じ運命を辿ります。現在は国有化され、博物館になっています。
フュルステンベルク城 Ruine Fürstenberg
ここも左側です。1219年、ケルンの大司教によって周辺の守護と関税のために建てられたもの。
17世紀にはスペイン軍やスウェーデン軍が占領、その後フランス軍の攻撃で廃墟に。現在は私有で見学はできません。
シュタールエック城 Burg Stahleck
左手に見えるバッハラッハの町を過ぎたところの丘に建つお城。とんがり帽子の塔がカワイイですね!
このような主塔はベルクフリート Bergfriedと呼ばれます。
1925~27年に修復されて、ユースホステルに。なんと現在もユースホステルとして営業しています。
プファルツ城 Burg Pfalzgrafenstein
突然現れて驚かせてくれたのは、中州に浮かぶ真っ白なお城。まるで屋根がオモチャみたい。
ライン川の通行税を取り立てるための税関所として、1326年にルートヴィヒ4世によって作られたもの。船を模して五角形になっているのは、水流による損傷を避けるためだそうです。
中州まで渡し船が出ており、中は博物館になっています。
グーテンフェルス城 Burg Gutenfels
一つ上の写真で岩壁の上に見えているのが、グーテンフェルス城です。
こちらも徴税のために使われていた歴史があります。
HOTELと書かれている通り、現在はホテルになっています。
シェーンブルク城 Schönburg
ライン川でもひときわ優美な外観のお城が左手に見えてきました。
Schönburgとは、ドイツ語で「美しい城」という意味だそうで。遠目に見ても十分にその美しさを感じられます。
1166年にフリードリヒ1世(バルバロッサ)から戦功をたたえてこの城を与えられた家臣は、ライン川からの徴税と周辺で作られるワインで財を成し、後にシェーンブルク家を名乗るように。1689年にフランス軍の攻撃を受けるも、強固なため完全には破壊できなかったそうです。
現在は改修されて、ライン川で随一の高級ホテル「アウフ・シェーンブルク Burghotel Auf Schönburg」として営業しています。22室しかなく、今回は満室で予約が入りませんでした。次回のドイツ旅行では、是非泊まってみたいと思います。
www.burghotel-schoenburg.de/
カッツ城(ねこ城) Burg Katz
1371年にカッツェンエルンボーゲン伯によって造られた城、進行方向右手に見えます。
正式にはノイカッツェンエルンボーゲン城と、舌を噛みそうなほど長い名前です。短くカッツ城と略され、ドイツ語で猫を意味するカッツェ Katzeから、「ねこ城」とあだ名されています。
ちなみに愛知県には「犬山城」というお城がありますが、犬山市はここザンクトゴアルスハウゼンと友好都市になっています。(笑
余談をもう一つ、このお城は日本人が購入したことでも有名らしく…お値段は3億円だそうです。
ラインフェルス城 Burg Rheinfels
左手に見えるお城は、何度も増改築が繰り返されて、ライン川で見られる城の中では随分と規模の大きなもの。1245年に造られてから、幾多の争いにも関わらず落城したことがなく、他のライン川のお城が軒並み破壊されたフランス軍の攻撃にも耐え抜いたそうです。
現在は近代的なホテル「シュロス・ラインフェルス Schloss Rheinfels」として営業。ここもライン川の古城ホテルの中では魅力的です。
www.schloss-rheinfels.de/
ねずみ城 Burg Maus
ねこ城と同じく、カッツェンエルンボーゲン伯によって作られたもの。よって、ねこ城に対して「ねずみ城」だそうで。(笑
現在は私有で見学はできません。
リーベンシュタイン城 Burg Liebenstein と シュテレンベルク城 Burg Sterrenberg
右手の山の上に仲良く並ぶのは、兄弟城として知られる2つのお城。
マイナーなのか、ガイドブックでもほとんど紹介がありません。現在はカフェやホテルになっています。
マルクスブルク城 Marksburg
左手の山の上に白く輝くお城。その端正な佇まいからは想像できませんが、難攻不落の城塞らしく、ライン川の中流で破壊されることなく今に残る唯一のお城だそうです。
内部は見学することが可能です。
ストルツェンフェルズ城 Schloss Stolzenfels
まもなくコブレンツ。最後に左手に見えたのは、ストルツェンフェルス城。
徴税のために造られ、フランス軍に破壊され…という典型的な歴史を辿っていますが、近年修復を行なっており美しい外観になっています。
内部は見学することが可能です。
旅行情報
旅される方のために、2012年時点の記録を残しておきます。
KD RHINE は、マインツMainz から ケルンCologne まで、33か所の乗り場を結んでいます。下りより上りの方がかなり多くの時間を要します。船内は自由席です、予約は必要ありません。乗船する桟橋でチケットを購入してください。なお、冬(10月下旬~4月上旬)は運休します。
Kitagawaは始発のマインツからコブレンツまで乗り、所要時間は5時間30分でした。ただし最初は大して見所が無いため、リューデスハイムRüdesheim や ビンゲンBingen から乗っても良さそうです。日程に余裕が無い方は、ザンクトゴアールSt.Goar で降りれば、乗船時間は1時間30分まで短縮できます。もしコブレンツから先、終着のケルンまで乗ると、さらに5時間30分の時間がかかります。
船に乗る町までは鉄道の利用が一般的です。フランクフルト市内からマインツまではSバーンのS8で1時間弱。電車のスケジュールは、Rhein-Main-Verkehrsverbund(フランクフルト市内交通)や DB(ドイツ国鉄)のWebサイトで、船のスケジュールや乗り場についてはKD RHINEのWebサイトでご確認ください。
帰りも鉄道を利用しました。船で半日かけて下った距離も、特急電車なら1時間も要しません。鉄道はライン川に並走しているので、今まで見てきたお城をもう一度見つけられるかも知れませんね。コブレンツからフランクフルト中央駅までは、ICEやICを使えば 1時間半くらいで帰って来れます。午後5時にはホテルに戻れました。
KD RHINE(KDライン観光船)
www.k-d.de/
DB Bahn(ドイツ国鉄)
www.bahn.de/
Rhein-Main-Verkehrsverbund(フランクフルト市内交通)
www.rmv.de/en/
一つのお城だけでも数百年の歴史があり、文献によって記録や解釈も異なるため、ここでは詳しい解説を省略しました。なお、ライン川クルーズで見られるお城については、以下の個人サイトで詳しく紹介されています。
日本全国お城めぐり(タクジローさん)
castle.slowstandard.com/80other/84germany/
2011 Deutscheland Tour(Yamagishiさん)
classic.music.coocan.jp/2011deutsch/rhein/
以下は個人的な旅の資料です、現在公開していません。
KDライン観光船のパンフレットと時刻表 2012年版 (4.3 MB)
航行情報 Rheinradweg von Mainz bis Rolandseck (1.3 MB)
マインツの地図 (1.3 MB)
KDライン観光船のパンフレットと、乗船チケット。
帰りのインターシティの車窓から。KDライン観光船の向こうにグーテンフェルス城を望む。
ドイツで最も美しいお城、ノイシュバンシュタイン城も必見です。
コメント
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kitagawaさま、
この度は拙ブログをご覧いただきありがとうございました。こちらのブログも拝見させていただきましたが、素晴らしいお城の写真の数々だけでも嘆息しきりですのに、ものすごい旅行記の充実ぶりですね!
私も旅行好きの部類には入ると思うのですが、kitagawaさんの足元にも及びませんね(笑)。私の旅の仕方にはどうもかなり偏りがあるようなので、今後こちらの旅行記を大いに参考にさせていただこうと思います。
突然のコメントにも関わらず、お返事ありがとうございます。
うじょうさんがお泊りになられたシェーンブルク城は、次回ぜひ泊まってみようと思っています。なかなか実際に滞在された方の記事が無いため、大変参考になりました。
船から見ただけの私とは、臨場感がまったく違うことを痛感しております。今月はドイツのお城情報が次々とアップされており、地図を首っ引きに勉強させていただいている次第です。
今後とも、よろしくお願いいたします。
素敵なお写真の旅行記にめぐり合い、じっくり読ませていただきました!
質問させてください。
10月にドイツに行き、ライン川クルーズ、シェーンブルク城に宿泊する、というプランを立てました。
リューデスハイムから乗船~コブレンツ下船、電車で折り返して古城ホテルへ、という流れです。
なので、スーツケースを船に持ち込むことになるのですが、
スーツケースを持ち込んでも大丈夫なのでしょうか?
持ちこめても、また置いておいても取られないか心配で。。。
荷物の預かりとかしてもらえるのでしょうか?
もしご存じなら教えてください。
宜しくお願いいたします。
meguさん、初めまして。
多くの旅行記の中から僕のblogを見つけていただいて、ありがとうございます。
さて、お尋ねの件ですが…船内にはスーツケースを持ち込んでも問題ありませんし、実際そういう乗客もいらっしゃいます。
広い船内なので、キャリーケース位なら手元に置いておけます。また、スーツケースは皆さん確か出入口の近くの床にまとめて置いていたように記憶していますが、船側が管理していたかどうかは分かりません。あちこち停船しますので、盗難が心配な場合にはワイヤーロックなどを準備して手すりに結んでおく、位の対策は必要かと思います。
お城ホテルにも泊まられるとのこと、羨ましいです!
どうか素敵なご旅行になりますように♪
初めて拝見させていただきました
来週娘とドイツに行きライン川クルーズに参加しますがもう行った気分で見ました
昔プラモデルで作った白鳥城も楽しみ
帰宅したらまたこちら見てみます
ありがとうございました
りこさん、初めまして!ただいまこちらはニュージーランド旅行中です。
ライン川クルーズはのんびりしていますが旅のハイライトになること間違いありません、娘さんと素敵な旅をお楽しみください。
鉄道が並走しているので、大きな荷物が無いなら、面白そうと感じた町の桟橋でフラリと降りてしまうのも、また面白いと思います。