01.06
北キプロス旅行記 ニコシア観光 停戦ラインを歩く
キプロス島の中央にある街、ニコシア観光の旅行記です。
この町はキプロス非武装地帯で南北に分断されており、今回はトルコ側の 北キプロストルコ共和国 に滞在しました。進行中の紛争地ですが治安は良く、平和的な解決もそう遠くないと感じました。南のギリシャ側、キプロス共和国からも気軽に日帰り訪問することができます。
トルコ側を中心に旅するため北キプロスに空路で入りました。
イスタンブールから北キプロスの エルカン空港(ECN) に到着。北キプロス行きの飛行機や出入国情報、空港から市内までの行き方は イスタンブール発北キプロス・エルカン行きアトラスジェット搭乗記 をご覧ください。
新市街
まずは空港からのバスが着いたバスターミナル(オトガル)周辺を歩いてみました。
この辺りは地味な街並みでカフェのようなものすら見当たりません。オトガルの南に建つ City Royal Hotel が唯一見かけた近代的なホテルで朝食付き265TL。タクシーは電話で呼ぶようで流しのタクシーを通りで拾うのも一苦労でした。
トルコでは涼しさの増す9月の末だというのにキプロス島の6~9月の平均最高気温は30℃を超えており、内陸部では日によって40℃を突破することも。あまりに暑いので日陰にあった売店で地図を広げ、ニコシアを一回りしたら早々に 海が見える北部のギルネに行ってビーチリゾートを楽しむ ことにしました。
2016年現在「地球の歩き方」など日本のガイドブックでは北キプロスを取り上げていないので、じっくり回るなら英語ガイドブックの「Lonely Planet」が便利。Kitagawaは毎度のことながらガイドブック無しで来ています。
ニコシア観光(レフコシャ)
ニコシア Nicosia の中心は丸い城壁に囲まれた旧市街。
この中央をグリーンラインが横切っていて、上半分が北キプロストルコ共和国、下半分がキプロス共和国となっています。北キプロス側では町の名前をトルコ語で レフコシャ Lefkoşa と言った方が通じやすく、同じ町が2か国で“首都”とされる世界で唯一の例だそうです。
レフコシャのオトガルから旧市街まで距離は1kmなので歩いて行けます。
城壁の北の入り口は Girne Gate。真ん中の建物にツーリストインフォメーションが入っていますが、それほど熱心なアドバイスは得られませんでした。
南キプロスとのクロスポイントまで続く繁華街。
城壁の内側の方が断然賑わっていて人通りも多く、土産物屋も見つけました。
広場で見かけた柱は Venetian Column。
1489年に東部のSalamisからLefkosaに移され、オスマン帝国によって倒されたものを英国が建て直したもの。かつてはヴェネチア家の紋章と頂にサンマルコの獅子像が載っていたそうですが、現在はブロンズ球が柱の上に載せられています。後ろに見えるのは英国植民地時代の British Colonial Law Courts で、1901年築。
南北の境界に近づくと賑わいが増してカフェやレストランが建ち並んでいました。
南側のキプロス共和国から日帰り観光で歩き回るのもこの一帯でしょう。
キプロス島は1955年から続くキプロス紛争が解決しておらず、北部のトルコ系住民と南部のギリシャ系住民の武力衝突を防ぐため国際連合によって1974年に停戦ラインが引かれ、キプロス島に全長300kmにも及ぶグリーンライン(緩衝地帯、United Nations Buffer Zone in Cyprus)が設けられています。1983年に北部のトルコ系住民が北キプロスとして独立を宣言したものの、トルコ以外からは国家承認を受けていない状態が続いています。
Public Domain, under section 105 of the Copyright Act of 1976
紛争中とは言っても戦闘が行なわれている訳では無く、むしろ今やキプロス島で一つの観光スポットという様相。
7か所のクロスポイントが設けられており、エクスカーション気分でグリーンラインを越える ことができます。真正面、通りの真ん中に白い四角い看板が見えますでしょうか?南北を行き来できるニコシアのクロスポイントです。
キプロス国境
こちらがキプロス島を南北に分断するグリーンライン上にあるクロスポイントのうち、ニコシア旧市街のど真ん中にあって観光客の往来が多い場所。まだ紛争が解決していないので正式な国境ではありませんが、既に両国民の行き来は自由化されていて事実上の国境となっており、イミグレーションも置かれていました。それでも緩衝地帯は国連キプロス平和維持軍(UNFICYP)によって監視が続いており、やはり少しは緊張感も覚えます。
南から北への越境
まずは圧倒的に多い南のギリシャ側、キプロス共和国から北キプロスへの入国について。
パスポートさえあれば北キプロストルコ共和国に入れます。ただし パスポートに北キプロスの入国スタンプが捺されると南キプロスやギリシャへの入国ができなくなる 恐れが高いので、別紙に捺してもらうよう申し出た方が良いでしょう。
北キプロスの入国にビザは不要 です。
日帰り入国する旅行者は多いので心配は要らないと思いますが、北キプロストルコ共和国・外務省のページに公式情報が掲載されているので参考にしてください。
mfa.gov.ct.tr/consular-info/visa-regulations/
北から南への越境
反対に北のトルコ側、北キプロストルコ共和国から南のキプロス共和国に入国する場合の条件は流動的で、旅程としてもマニアックで口コミ情報がほとんど出て来ないので今回挑戦してみました。公式にはEU市民のみ北から南への越境が可能となっていますが、2016年9月現在 日本のパスポートで北から南への入国ができます。また、どういう訳か北キプロスの入国スタンプがパスポートにあっても問題にされず…単なる見落としでしょうか?
ただしニコシアでの越境は正式な入国とはならず、南キプロスのラルナカ空港やパフォス空港からは出国できません。つまり必ず北キプロスに戻らなければならないという制約が付くので注意が必要です。また、北キプロスで借りたレンタカーで越境することも2016年現在は禁止されていました。
旅行直後の2016年11月に南北の和平交渉が再開されましたが決裂に終わっています。解決にはまだ時間がかかりそうですが、パスポート一つで停戦ラインを超えられる世界一安全な都市 であることは間違いありません。北から入国するメリットはほとんどありませんけどね、航空券は北のエルカン空港行きが最も安い ので、旅慣れていて時間もあって、かつギリシャに行く予定が無いなら北キプロスを目指すと旅費は圧倒的に安上がりです。
北キプロス・ニコシア(レフコシャ)のホテル
ニコシアの北キプロス側で泊まった サライ・ホテル Saray Hotel をご紹介します。
クロスポイントから300mの場所にあり、トルコ側城壁内にある唯一の近代的なホテルです。
予約も無しにウォークインで宿泊、320TL(10,955円)でした。
割高に感じますが、安宿と呼ばれるところはもっと内容と金額のバランスが乖離しています。ここはホテルの多いギリシャ側に宿を取るのが一般的ですが、もし北キプロスで泊まるなら後述するバスでギルネの町まで出ると選択肢が広がります。
お部屋自体はモダンで空調や水回りも問題なし。ただしチェックアウト後に荷物を預かってもらったら「玄関に適当に置いておいて良いよ」と言われまして、サービスはその程度のレベルです。
朝食は宿泊料に含まれており、最上階のレストランにて。
高層建築がほとんど無いのでルーフトップのテラスからレフコシャの町を一望できました。
暑さは堪りませんが雨がほとんど降らない時期でもあり、雲一つない真っ青な空が嬉しい!
向こうに見えているのは セリミエ・ジャーミイ Selimiye Camii、かつて 聖ソフィア大聖堂 St. Sophia Katedrali と呼ばれたキプロス島で最大の大聖堂を転用したモスクです。
ホテルのWi-Fiが使い物にならず、向かいにあるカフェ Gloria Jean's Coffees でインターネットを利用しました。ここはお外の席しかありませんがお洒落カフェで良い感じ。Kitagawaはエルカン空港で5GBのデータ通信ができるSIMカードを 50TL(1,764円)で買っており、城壁内にも携帯ショップが多数あるので北キプロスを長く旅行する方は手に入れておくと重宝します。
レフコシャのレストランで夕食。
北キプロスは観光客が極めて少ないので、その分物価が安くて治安も良いと感じました。
Milli Mücadele ve Kurtuluş Anıtı
ニコシアの北のロータリーにある戦争記念塔。
Hala Sultan Camii
ニコシアとエルカン空港の間で見かけた大きなモスク。
北キプロスの国内バス移動
はっきり言ってレフコシャだけ見てもトルコ側の魅力や実態はこれっぽっちも理解できません。
海沿いの町まで足を延ばしてみるとレフコシャとは違った解放感に包まれて驚くはず。そしてどういう訳か若い外国人も結構いて、声を掛けてみると何と留学生とのこと。後から知ったのですが北キプロスは英語による大学教育に力を入れており、学費収入が大きな産業になっているそうです。
行きやすいのは ギルネ Girne の町。
レフコシャの城壁を出て右手の公園前(ページ先頭の地図上に場所をマッピングしてあります)からギルネ行きミニバスが頻発していました。
運賃は 5TL(176円)で、トルコリラ現金で支払い。
レフコシャからギルネまで1本道で、片道45分でした。途中、山を越えてがらりと雰囲気が変わります。
着いたギルネの町からも東西にバスが出ています。
僕らはビーチリゾート Denizkizi Hotel に行くため別の車に乗換えました。運転手さんは英語が全く通じないのですが、レフコシャの公園前で Denizkizi Hotel に行きたいと言ったら近くにいたオジサンが運転手さんに上手く伝えてくれたようで、次のバスにもちゃんと乗せてくれました。
キプロスの皆さんは観光客に関心が薄いというか…やや無愛想に感じることもありましたが、根は良い人ばかり。思いがけない親切に助けられることも多く、行き当たりばったりながら楽しく過ごせました。英語が通じる人からは北側に旅行に来たことを熱烈に歓迎され、日本への関心の高さにも驚かされました。
北キプロストルコ共和国、まさに地中海の穴場。
北は観光客の誘致、南はEUへの加盟が悲願なので、今後どんどん旅行しやすくなると思います。停戦ラインを自分の足で越えてみて、民族紛争・領土問題は必ず時間と対話で解決されるものと確信できました。
北キプロストルコ共和国 政府観光局
www.turizmtanitma.gov.ct.tr/
北キプロス・レフコシャ地図 (1.4 MB)
北キプロス・レフコシャ見どころ英文解説 (2.4 MB)
英文パンフレット Lefkoşa 編 (20.8 MB)
英文パンフレット Girne 編 (20.6 MB)
英文パンフレット Gazimağusa 編 (23.2 MB)
英文パンフレット İskele 編 (6.4 MB)
英文パンフレット Güzelyurt 編 (12.5 MB)
コメント
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>北は観光客の誘致、南はEUへの加盟が悲願
キプロス共和国は、2004年に欧州連合に加盟していますよ。
はじめまして。
トルコ経由で北キプロスに入国しました。
そこから(南)キプロスに入国し、空路で:第三国に出国できました。どのブログでもエルカン空港に入国したら出国する時もエルカン経由じゃないといけないと拝見しました。ところが、うっかりとその情報を忘れていまして南キプロスから第三国行きのチケットを買ってしまっていました。試しにチャレンジして見たところ、普通に出国できました笑 この情報は2022年4月情報です。